三島は 狂っていたのか

 三島が死んだとき、ときの総理大臣の佐藤栄作は「狂っている」という内容の発言をしたことを覚えている。概ねこの発言が当時の世相を反映したものであったと思う。

 しかし、このとき戦後わずか、25年しかたっていない。戦争の総括を何らしないまま経済がうまくまわっている事を良しとして、戦争はなかったことにすることで決着をつけてしまおうとしつつあった。

 300万人が死に、数百万人が難民としてさまよった事をたった25年でなかったことにすることを許せない人は多かったと思うし、その中で三島は何らかの行動をしなければ浮かばれないと思ったのではないか。

 あの戦争に勝っていたらどのような世界を築くことが出来たのか。敗戦により、アメリカのプレスコードなどは許される範囲だったのか。検証することを結局誰もしないまま終わる事が許され、次の戦争の準備に入るのかと思うと、三島事件は考えなければならない事件だと思う。